冬の別荘に欠かせないアイテム、薪ストーブ。パチパチと弾ける薪の音、揺らめく炎、そして優しい暖かさ。
薪ストーブは、五感に訴えかける特別な体験を与えてくれます。
本記事では、別荘での薪ストーブ選び、設置、利用に関するポイントを網羅的に解説します。
薪ストーブの最大の魅力は、なんといっても揺らめく炎と輻射熱による暖かさです。炎を眺めることは心身に癒しを与えてくれますし、輻射熱は体の芯から温めてくれるので、エアコンとは比べ物にならない心地よさを体感できます。
高気密・断熱された別荘であれば、薪ストーブ1台で家中を暖めることも可能です。しかし、暖房効果を実感するにはいくつかの注意点があります。
1. 着火から暖かくなるまで時間がかかる
薪ストーブは、輻射熱で暖めるため、本体が十分に温まるまで時間がかかります。着火して1時間は暖かくありません。さらに、冷えた別荘を温めるには3時間程度かかる場合もあります。そのため、来荘時や朝などは補助の暖房器具との併用をお勧めします。
2. 朝まで暖めるには工夫が必要
一般的な薪ストーブは、薪が燃え尽きると暖房効果も途切れます。2~3時間程度で燃え尽きてしまうため、寒冷地では朝まで暖めるには工夫が必要です。
- 触媒式薪ストーブ: 低温でも燃焼できるため、大型機種であれば朝まで暖めることができます。
- 蓄熱式ストーブ: 熱を蓄えて長時間放出するため、朝まで暖かさを維持できます。また、タイマー機能付きの自動給炭装置などを活用することで、夜中に薪を追加することなく朝まで暖めることができます。
3. 煙や煤の対策
薪を燃焼させるため、煙や煤が発生します。
- 適切な薪を使用する: 乾燥した広葉樹を使用することで、煙や煤の発生を抑えることができます。
- 定期的なメンテナンス: 煙突掃除や内部清掃など、定期的なメンテナンスを行うことで、煙や煤のトラブルを防ぐことができます。
4. 薪の準備
薪ストーブを使用するには、薪の準備が必要です。
- 薪の購入: 薪はホームセンターや薪販売店で購入することができます。
- 薪割: 自分で薪を割る場合は、安全に注意して作業する必要があります。
薪ストーブは種類やデザインが豊富で、選ぶのが難しいと感じる方も多いでしょう。
安全に長く使い続けるためには、以下の点に注意しましょう。
1. ストーブ屋さんの存在
- 経験豊富なストーブ屋さんは、設置場所や用途に合ったストーブ選びから、設置、メンテナンスまでサポートしてくれます。
- 初めての薪ストーブの場合は、別荘から近いストーブ屋さんを選ぶと、サポートを受けやすく安心です。
2. カタログスペックに頼らない
- カタログに記載されている暖房能力は、あくまで目安です。
- 古い別荘は断熱性能が低く、隙間風も多い場合が多いため、カタログスペック通りの暖かさを感じられない可能性があります。
- ストーブ屋さんに相談し、別荘の状況に合ったストーブを選ぶことが重要です。
3. 別荘の断熱性能と築年数の目安
1979年以前:断熱なし
1980年~1991年:旧省エネ仕様
1992年~1998年:新省エネ仕様
1999年以降:次世代省エネ仕様
4. 吹抜けの別荘
- 吹抜けがある別荘の場合、1階の特に床の近くが温かくならないことがあります。
- 必要に応じて、サーキュレーターやシーリングファンなどを設置し、暖気を循環させる対策が必要です。
薪ストーブ一覧表
項目 | 暖炉 | ペチカ | フランクリンストーブ | クリーンバーン式薪ストーブ | 触媒式薪ストーブ |
---|---|---|---|---|---|
構造 | 開放型 | 蓄熱式 | 鋳鉄製 | 二次燃焼 | 二次燃焼 + 触媒 |
燃焼効率 | 15% | 30-50% | 20-50% | 70-80% | 80-95% |
燃料 | 薪 | 薪 | 薪 | 薪 | 薪 |
排気 | 開放型 | 煙突 | 煙突 | 煙突 | 煙突 |
熱効率 | 低い | 高い | 中程度 | 高い | 非常に高い |
メンテナンス | 比較的簡単 | 比較的難しい | 比較的簡単 | 比較的簡単 | 比較的難しい |
設置費用 | 安価 | 高価 | 中程度 | 高価 | 非常に高価 |
特徴 | 開放的な炎 | 蓄熱による長時間暖房 | 鋳鉄製による耐久性 | 二次燃焼による高効率 | 触媒によるクリーンな燃焼 |
向いている場所 | リビング | 寝室 | リビング | リビング | リビング |
おすすめ度 |
どの薪ストーブを選ぶかは、それぞれのニーズや予算に合わせることが重要です。
暖炉は、薪を燃焼させて熱を発生させる暖房器具です。燃焼効率は**80~95%**と高く、非常に効率的な暖房と言えます。
触媒(キャタリティックコンバスター)と呼ばれる装置を使って、煙を燃やし尽くすタイプです。通常、煙は550℃以上で燃えますが、触媒を使うことで260℃という低温で完全に燃やすことができます。そのため、燃焼効率が高く、煙や煤の排出量が少ないのが特徴です。
ペチカは、ロシアや北欧などの寒冷地で古くから使われてきた暖房器具です。燃焼効率は**30~50%**レンガで造られた炉で火を焚き、煙突のレンガから発生する輻射熱で部屋を暖めます。
特徴
- 高い蓄熱性: レンガが熱を蓄え、長時間暖かさを維持することができます。
- 遠赤外線効果: 遠赤外線効果で、体の芯から温まります。
- 複数の部屋を暖める: 間仕切り壁として設置することで、複数の部屋を暖めることができます。
- 燃料の多様性: 薪だけでなく、石油ストーブなどの熱源も使用可能です。
フランクリンストーブは、18世紀にベンジャミン・フランクリンによって発明された暖房器具です。鋳鉄製の箱型ストーブで、燃焼効率は20~50%と、暖炉と同様に高いとは言えません。しかし、フランクリンストーブには、暖炉にはない独特の魅力があります。
フランクリンストーブの特徴
- 高い熱伝導率: 鋳鉄製のボディは熱伝導率が高く、効率的に熱を伝えます。
- 対流熱: フランクリンストーブは、対流熱で部屋を暖めます。対流熱は、部屋全体を均一に暖めることができます。
- コンパクトなサイズ: 暖炉に比べてコンパクトなサイズなので、設置場所を選ばないのが特徴です。
- 調理機能: 一部のフランクリンストーブは、ストーブトップで調理ができるものがあります。
クリーンバーン式薪ストーブは、一次燃焼で発生した煙を二次燃焼させることで、燃焼効率を70~80%と高めた薪ストーブです。従来の薪ストーブに比べ、環境への負荷が少なく、燃費も良いのが特徴です。
クリーンバーン式薪ストーブの特徴
- 高い燃焼効率: 燃焼効率が70~80%と高いため、薪の節約になります。
- 環境への配慮: 煙の排出量が少なく、環境に優しい暖房器具です。
- 操作が簡単: 操作が簡単で、誰でも簡単に使いこなすことができます。。
触媒式薪ストーブは、触媒(キャタリティク コンバスター)と呼ばれる装置を使って
煙を燃やし尽くすタイプの薪ストーブです。
通常、煙は550℃以上で燃えますが、触媒を使うことで260℃という低温で完全に燃やすことができます。
触媒式薪ストーブの特徴
高い燃焼効率: 燃焼効率が80~95%と非常に高いため、薪の節約になります。
環境への配慮: 煙の排出量が少なく、環境に優しい暖房器具です。
煤の発生が少ない: 触媒によって煙が燃焼するため、煤の発生が少ないのが特徴です。着火が容易で、操作も比較的簡単です。部屋全体を暖める輻射熱に加え、対流熱も発生するため、部屋全体を均一に暖めることができます。
薪ストーブは、暖房器具としてだけでなく、インテリアとしても魅力的な存在です。
しかし、設置には高額な費用がかかるだけでなく、いくつかの課題も存在します。
- 本体:20万円~
- 煙突:50万円~
- 工事費:30万円~
- 足場組立:20万円~
合計すると、100万円以上の費用がかかる場合がほとんどです。
ホームセンターなどで販売されている格安のストーブは、燃焼効率が悪く、耐久性が低い場合があります。
また、設置を自分で行う必要があるため、煙突の設置を誤ると、燃焼効率が悪くなるだけでなく、火災の危険性があります。
ストーブ屋さんで購入する場合は、煙突から設置まで含めて、40万円~200万円程度が相場です。
煙突はスムーズな燃焼と煙道火災を防ぐために、二重煙突を使用します。
大型ストーブの場合は、それに応じて煙突の費用も高くなります。
ストーブ本体費用と同程度か、それ以上かかる場合もあります。
煙突も周辺から離しておく必要があります。
煙突が屋根から出る部分は、雨漏りしないようにしっかりとした施工が必要です。
薪ストーブは、適切なメンテナンスを行うことで、30年以上も使用できる耐久性を持っています。
しかし、メンテナンスを怠ると、10年ほどで故障してしまうこともあります。
一階のメンテナンス費用は、薪ストーブ屋さんにもよりますが、1万~6万円くらいでやってもらえます。
薪と焚きつけの準備時期
雪が降る前に準備しておきましょう。
落ちている小枝や松ぼっくりで十分です。
拾い集めて、乾燥させます。
針葉樹の薪を細く割っても使えます。
薪の束の隙間を詰めるためにも入っている細い薪も使えます。
薪をくべる際に、選り分けて取っておきます。
購入するか、自分で作ります。
薪を購入する場合は
針葉樹と広葉樹の両方を用意しておくと、火持ちが良くなります。
薪のサイズは、ストーブの大きさに合ったものを選びましょう。
薪を自分で作る場合は伐採した木を薪割り機で割ります。
薪割り機がない場合は、斧で割ることもできます。
薪は、風通しの良い場所で乾燥させます。
乾燥期間は、6ヶ月~1年程度が目安です。
針葉樹: 火が付きやすく、燃えやすいのが特徴です。
広葉樹: 火付きは悪いですが、火持ちが良いのが特徴です。
薪は、風通しの良い場所で保管しましょう。
雨や雪に濡れないように、屋根付きの場所に保管するのが理想です。
寒冷地では、戸外に置いた薪は凍っている場合があります。凍った薪をそのままストーブに入れると、燃焼効率が悪くなります。
薪を室内に運び入れ、少なくとも24時間ほど温めてください。
薪が完全に解凍し、乾燥してから使用しましょう。
薪を運び入れる際の注意点
床に直接置かずに、台や棚などに置きましょう。
木屑が落ちたり、虫が出てくることがあるので、新聞紙などを敷いておくと良いでしょう。
火の付け方
準備
- 前の扉と空気口を開けます。
- 着火剤を置きます。
- 大きめな薪を両サイドに置きます。
- その上に焚きつけを置きます。
- さらにその上に細い薪を置きます。
着火
- 着火剤に火を点けます。
- 扉を少しだけ開けておきます。
燃焼
- 上の薪に火が点いたら、扉を閉めます。
- 炉内の温度が上昇し、大きな薪に火がつきます。
- 火が安定したら、空気口を少し絞ります。
注意点
- マッチをつけた際に、炎がストーブの外にくる様な場合、部屋が陰圧になっています。
- 陰圧状態だと、煙が部屋に充満してしまうので、窓を開けて換気扇を切ります。
- 24時間換気の吸気口が閉じている場合もあるので、確認してください。
触媒式薪ストーブの場合
- 煙の温度が低いと、触媒に煤やタールが付着して目詰まりを起こします。
- 着火時は、煙が触媒を通らないようにバイパスダンパーを開けます。
- 炉内の温度が260℃まで上昇したら、バイパスダンパーを閉じて煙を触媒に通します。
- 煙が燃焼するので、排気の温度は600℃ぐらいまで上昇します。
- さらに1000℃まで上がると、触媒が壊れてしまうので、温度を見ながら吸気口を調整してください。
クリーンバーン式薪ストーブの場合
- 煙の温度が低いと、前面のガラスにタールが付着して茶色になります。
- 着火後は、勢い良く燃やすため、吸気口を全開にし、前の扉も少し開けます。
- 足元が冷えるので、スリッパを履きます。
- 薪ストーブは暖かくなるのに時間がかかるので、補助暖房を点けます。
- チャッカマンは冷えると火が点きません。自宅から持ってくるか、ポケットなどに入れ暖めてから使います。
- ストーブ用の軸の長いマッチはいつでも使えるので便利です。
- 適度にオキが残っている場合、薪を1~3本足します。
- オキが少なくなると、炉の温度が下がり、燃焼効率が悪くなります。
- その状態で薪をくべても、薪が燻されて、ガラスが曇ったり、触媒にタールが付きます。
- 焚きつけを入れて火をおこしてから、薪を足してください。
- 着火時に灰受けのドアを開けることは問題ありません。
- 灰受けを開けたままにしておくと薪が勢い良く燃えますが、空気が大量に入るので炉の温度が下がり、燃焼効率が下がります。
- 焚いている間は、忘れずに閉めましょう。
- 薪がぶつかって、開いてしまうことがあるので、注意してください。
- 燃やし切ります。
- 耐震消化装置は無く、煙道火災の危険もあるので、火がついた状態でその場を離れる場合は自己責任です。
- 前の扉、空気口、薪の投入口、灰取り口をしっかり閉じてください。
- 大きなオキは火消壷に入れると、炭を作ることができます。
- 暖を取るために、就寝中に燃やす場合は自己責任になります。
- 薪を炉内一杯に入れると、燻されて、ガラスが曇ります。
- 少し多めに薪を入れて、少し空気口を絞ります。
- 薪は2~3時間で燃えてしまいますが、ストーブ自体は予熱で暖かいです。
- ただし、寒冷地では補助の暖房が必要です。
- 薪ストーブは、部屋の空気で燃焼し、煙突から吐き出します。
- そのため、台所やトイレや風呂場の換気扇から冷たい空気が入り、風の流れ道が寒くなります。
- 高気密の別荘の場合、吸気パイプを設置しましょう。
薪ストーブの魅力
薪ストーブは、他の暖房器具とは異なり、薪を準備する手間があります。しかし、その手間は薪ストーブを楽しむための大切な要素であり、家族や友人との団らんの時間にもなります。中には、薪割が趣味という人もいるほどです。
薪の種類
- 広葉樹:ナラ、桜など。火持ちが良いので、主燃料として使用されます。
- 針葉樹:松、杉など。油分を含むので、燃えやすく、着火時に便利です。しかし、燃焼温度が高いため、ストーブを痛めたり、煙突を汚したりすることがあります。火持ちが悪いので、主燃料には向かず、広葉樹と混ぜて使用します。キャンプやバーベキュー用の薪として販売されています。
- 人口薪(ブリケット):大きなペレットのようなもので、おが屑、カンナ屑、または新聞紙などを乾燥させて圧縮したもの。乾燥しているので、着火が容易で、火力が強いので便利です。しかし、日本では普及していないため、割高です。
薪の値段
- スーパーやホームセンター:600~700円
- ストーブ屋さん:400~600円。ストーブを購入した人向けのサービスもあります。
- 森林組合や建材会社など:300~500円
- ネット販売:600円前後。ダンボール箱詰めで、送料込みです。
- その他:地域によって異なりますが、一般的に別荘地は高くなります。周辺を探してみると良いでしょう。
無料の薪を手に入れる方法
- 管理事務所や市町村の貯木場:許可を得れば、無料で薪を手に入れることができます。
- 果樹園、製材所、造園業者:剪定枝や端材などを無料で譲ってもらえる場合があります。
ただし、無料の薪は、自分で乾燥させる必要があるため、1~2年かかることを覚悟しておきましょう。
また、薪を手に入れる際には、以下の点に注意が必要です。
許可を得ずに勝手に薪を持ち出すのは違法です。
立ち入り禁止区域に入らないようにしましょう。
木を切るためのチェーンソー、丸太を運ぶためのトラック、薪に割るための斧か薪割り機、薪を乾燥/保管させておく薪棚などの初期投資が必要です。
週末利用では、元が取れない可能性があります。
焚きつけ
天気の良い日の散歩に、軍手と鋸、大きなバックを持って行きましょう。落ちている枝や松ぼっくりを集めて持ち帰り、乾燥させます。乾燥したら、適当な長さに切りそろえておきます。
薪の隙間に入っている細い薪も選り分けておきましょう。
着火剤
- チューブに入った着火剤
- 鍋料理用の燃料
- おがくずに石油をしませて固めたもの
などがあります。
専用の着火剤は炎がきれいなのでおすすめです。
その他
- 新聞紙はすぐに燃え尽きてしまい、冷えた薪を燃やすのには非力です。特に置きっぱなしにした新聞紙は湿気で火が点きにくいです。
- 焚きつけは、細く乾燥したものがよく燃えます。
- 着火剤を使う場合は、説明書をよく読んでから使用しましょう。
まとめ
薪ストーブは、暖房器具としてだけでなく、インテリアとしても魅力的な存在です。
しかし、設置には高額な費用がかかるだけでなく、いくつかの課題も存在します。
設置を検討する際のポイント
- 設置費用を予算に組み込む
- 煙突の設置場所を考慮する
- 高所作業の安全性を確保する
- ランニングコストも考慮する
薪ストーブは、適切なメンテナンスを行うことで、長く愛用することができます。
【完全版】これを見れば確実!別荘購入前の現地見学で確認すべきポイントと注意点について 【解説】別荘を購入する際の注意点とは?具体的にわかりやすく説明します!